立った途端に、視界がぐにゃりと歪んだ。
長時間座りっぱなしだったから、立ち眩みしたんだ。
ダメだっ、転ける!
と思った瞬間、ガシッと体を支えられた。
「っとに~、ヒメっちは~」
定まった視界が真っ先に捉えたのは、カイン。
またゆるい顔で笑ってるけど、少し息が荒いせいで、走って来てくれたのが容易にわかる。
「ご、ごめん。ありがと、カイン」
少し俯いてお礼を言う。
なんか、目……見れない。
「大丈夫?疲れてるっぽい?」
茶色い瞳を揺らして覗き込む、その仕草が堪らなく可愛くて。
「ダメ」
「え?出れないの~?」
シュン、として仔犬のような声を出す。
「あ、違っ…大丈夫!ダメじゃないよ」
そう、ダメじゃないよ。
ダメなのは…あたし。
蓮の弟にドキドキしちゃったあたしが、ダメなんだよ。

