「俺は人殺しに成りたかねぇし」


「へ?」


蓮が自分の袖で口を拭いて、あたしをギロっと睨み付けた。


ひやりとしたものが背をなめる。


「べべ、別に蓮が人殺し何て言ってないし!」


「知ってるし。さっきからずっと丸聞こえだっつうの。…まぁ、警戒心が強いなら良い」


………。


さっきの泣きそうな顔じゃなくてよかった。


キスをする前の蓮じゃなくて、よかった。



今の蓮はいつも通り、不敵に笑ってる。

そう、意地悪そうに。


まるで何かを企んでるような。


企んでる!?



ちょっとっ!!



「きゃっ!」



瞬間的に目を閉じたけど、世界が反転したのはわかる。


背中に衝撃が……




無い。




無いんだ、何故か。