コツコツと鳴らすその足音は、ゆっくりとこちらに近付いて来る。
柚奈さん、座ってれば良いのに。
なんて呑気な事を思ってたら、その足音は止まることなく、確実に近付いている。
徐々に大きくなる、足音。
ちょっと待って。
柚奈さん、今日ヒールのある靴じゃなかった…。
事務所に居るときはそうだけど、撮影の時はいつもスニーカーだ!
コツコツなる音で撮影の邪魔になっちゃダメだからって、この前言ってたもん。
………。
じゃあ………
今此処に、部屋に居るのは誰?
急に恐怖感が芽生えたあたしは、ソファーに寝転んだまま身動き一つ取れない。
ゆっくり、ゆっくりと近寄る正体不明の足音に脅えながら、体が震えて今にも泣き出しそうになるのを堪えて、きつく目を閉じる。

