「──なぁ、恭介。ベッド買おうぜ」


 そんな何気無いヒメの一言が、何気無い1日の始まりを告げるものだった。


 ヒメとの新たな同居生活が始まって早2週間。

 相変わらずヒメは、狭いのを承知で俺のベッドに潜り込んで来る。

 しかも、壁側に。

 ヒメを好きだと思う俺の気持ちを知っているくせして、何食わぬ顔で体を寄せてきやがる。

 はっきり言って、生殺しも良いところだ。

 とは言え、ヒメと今すぐどうにかなりたいとかいう訳でもない。

 俺って、案外淡白なのかも知れない。

 そんな風に思っていた矢先、突然ヒメが『ベッドを買おう』なんて言い出したのだ。

 俺は単にヒメが布団を使いたくなくてそんなことを言っているんだと思った。

 でも、どうやら違うみたいで……。