誘惑プリンセス【BL】

 律くんは、朧さんの事を知らないのだろうか。

 寧ろ、知らないからバンドのメンバーとして迎え入れたのかも知れない。

 とはいえ、陣くんは余り乗り気じゃなさそうだけど。


 ていうか。


 ヒメ達はそもそもなんの為に集まったんだ?

 さっきからバンドの話なんて一切出てこないじゃないか。

 それに、ドラムの朔杜さんが居ないのも気になる。


「恭介、フライドポテトが食べたい」


 空いたチューハイの缶をテーブルに置いたヒメが、不意に話し掛けてきた。


「そんなん無いよ。ポテトチップでいいならあるけど」

「じゃあ、それで」


 ヒメは手を伸ばして、ビールの缶を取る。


「ちょっと待て!」


 俺は、ビールを開けようとするヒメの手を掴んで止めた。


「さっきからビールとチューハイ交互に飲んでるだろ!?」

「別にいーじゃん。甘いから中和してんの」

「何が中和だ。悪酔いするぞ」

「しねぇよ。そんなに弱くないもん」


 もん……て、お前……。


 口を尖らせて言うヒメに、思わず心臓が跳ね上がる。

 ほんのりと赤らんだ頬とか、微妙に潤んでる瞳とか。

 いつもと雰囲気の違うヒメに、ドキドキする自分が恨めしい。

 きっと、俺も酔ってるんだ……。

 そうに違いない。