こうなると、間合いに入ってしまったラインハルトさんは不利となる。

ギラリと黒い輝きを湛える悪霊の眼。

その目前の空間に魔方陣が浮かび上がったかと思うと。

「ぐぁっ!」

魔方陣から無数の白く透過した腕が伸びてきて、ラインハルトさんに掌打を浴びせた!

あの手は霊体なのか、それとも魔法による効果なのか。

ともかく、高い防御性能を持つ甲冑を纏ったラインハルトさんさえも、この攻撃には為す術もなく吹き飛ばされる!

「く、こいつ…」

床に横たわり、ググッと上体を起こしたラインハルトさん。

そこへ。

「!?」

悪霊の更なる追い打ち。

大きく開いた口から、何かを吐き出す!

それは、いわば『視認できる言葉』。

しかもただの言葉ではない。

この世界では見た事もない暗号のような黒い文字が、発音も出来ないような言語と共に悪霊の口から発せられる!

「いけない、これは…!」

ラインハルトさんが慌てて身を起こす。

「『呪詛』か!」