「ミーシャはここで待っていてくれ。すぐに戻る」

一人で屋上に向かおうとするラインハルトさんに。

「私も行きます」

微かに震える膝に喝を入れ、私は立ち上がる。

「大丈夫だよミーシャ。このくらいの悪霊ならば僕一人でも対処できる。君の手を煩わせる事は…」

「いえ」

私は首を横に振った。

ラインハルトさんの強さは分かっている。

私も彼が後れを取るとは思っていない。

しかし。

「ここは私の愛すべき学園…そして私はこの学園の風紀委員長です。事の顛末を最後まで見届け、学園長に報告する義務が、私にはありますわ」

正直言って幽霊だの悪霊だのは苦手だ。

だけど私は、風紀委員長という仕事に誇りを持っている。

この職務だけは、恥じる事のないように遂行したい。

「頑固な所はエルフらしいね」

僅かに笑みを浮かべ。

「行くよ、ミーシャ!」

ラインハルトさんは宿直室を駆け出した。