恋にキスを

『俺さ…彼女できたんだよね。』




溜まっていた涙がこぼれた瞬間。



大貴は、一言冷たく言い放った。





「うん、知ってるよ。今まで、ありがとう。」




自分でも驚くほどに、すらすらと言葉がでてきた。


知ってたなんて、嘘なのに。


ありがとうなんて言いたくなかったのに。



あたしは無意識に、そう言っていた。




『…うん。』



寂しそうに言う彼。


どうしてそんな声だすの?



今、一番辛いのはあたしなのに。



どうしてそんなに、寂しそうなの?




「じゃあ、あたし大貴の前から消えるね。」



また無意識に飛び出した言葉。




『え…。』




電話から漏れる、大貴の驚いた声。





*-*