「…ヒック…南美さん、ありが、と。…ッ優しいね」
そう言ってゆっくりと私の背中に腕を回す。
私…南美咲月という人間を確かめるように少しずつ、少しずつ力を込めていく。
そんな歩美ちゃんを守ってあげたい、ずっと傍にいたいと思った。
クラスの皆は2人を見ていることしかできなかったが…
ここである1人が控えめに口を開いた。
「…え~と、良い雰囲気のとこ悪いんだけどさ。仲直りもしたことだし、皆で遊びに行かない?カラオケとか行って歩美ともっともっと!仲良くなろうよ!」
提案した人物の方に振り返る。
「琴ちゃん…」
なんて良いコなんだろう…。
素直にそう思った。
歩美ちゃんのために皆のために琴ちゃんは言ってくれた…だったらもう言うことはこれしかない。
「うん、行こうよ!私ももっと!!歩美ちゃんと仲良くなりたい!それに皆とも」
ニッコリと微笑んで皆を見渡し、「……皆は?」と尋ねた。
すると、今まで静かだった教室は皆の賛成の声で一瞬にして賑やかになった。
「あたしも行きたいな。つか早く行こ!」
友美は行く気満々だ。
「俺も早く行きてーな!カラオケだったら…やっぱあの曲だよな」
何故か行く所はカラオケらしい。
確かに琴ちゃんはカラオケとかって言ってたけど、まだ決まってないよ…優馬くん。
「よし!じゃあ何処行くか決めよっ!」
仕切る琴。
皆で相談している。
「へ?カラオケじゃねーのかよ?」
疑問をぶつける優馬。
それに乗るのが約1名。
「カラオケじゃないの~?カラオケがいいなぁ」
友美と優馬は「だよね!」「だよな!」と意気投合していた。
私は歩美ちゃんを落ち着かせながら、何処にしようか聞いていた。
すると後ろから「南美」私を呼ぶ声がし、振り返ると。
「竹井くん、どうしたの?」
竹井くんが手の平で耳を押さえながら立っていた。

