ゆっくりと琴の方に向き、涙ぐんだ声で「ホント、なの?」そう呟いた。

琴は照れているのか人差し指で頬を軽く掻いていた。
「う~ん…。確かに言ったけど、けっこう恥ずかしいもんだね」
アハハと小さく笑う。

ふっと真剣な顔になり、「でも…これで分かったね?」と切り出した。
「歩美が女子と関わらない理由」
琴の話しに耳を傾けていたクラスメート達は驚いた。
「「「!?」」」
何故、今の話で分かったのだろう。
皆そう思っていた。

「さっきの話で歩美が女子に言われた言葉覚えてる?」
その言葉にクラスメート達は頭の上にハテナマークを浮かべていた。
そんな中、「確か、ウザいとか言われたんだよね……」咲月がか細い声で答えた。
歩美は小学生の頃に『小野さんってウザくなーい?学級委員だからって威張りすぎだよねー』と言われた。

「そう…。だから、だよ。女子と付き合うのが恐くなっちゃったんでしょ?」
最初はクラスメート達に最後は歩美に。
「またウザいとか言われると思うと耐えられなかったんだよね…?」
優しく語りかける。

私が、もし歩美ちゃんの立場だったら…。
考え始める咲月。
…たった1度のウザいだって、小学生の幼い心には衝撃的でひどく傷付いただろう。
私なら耐えられない……。
学級委員だってやろうとは思わない。
それ、なのに…歩美ちゃんは学級委員をやり続けた。
そんな勇気、私には…ない。
だから、歩美ちゃんは凄いと思う。

「歩美ちゃん…。よく頑張ったね」
静まりかえっている教室に咲月の優しい声が響く。
「でももう…大丈夫だよ。歩美ちゃんはすごく頑張った。だからもう無理しなくていいんだよ…?誰かに甘えていいんだよ」
そう言いながら優しく…優しく包み込む。