その顔はまだ少しひきつっているが、何処かスッキリしているようだった。

「だけど…今は学級委員で良かったなって思う。たとえ、みんなが心から私のことを心配していなくたって…それならそれでいい。けど、1人でも本気で心配してくれた人がいるならいいかなって。学級委員としてだけでもいいから必要としてくれたら…私の存在理由が自然と生まれてくるもん…」

今にも泣きそうになる歩美。
そんな歩美を1番に抱き締めたのは…

ガバッ
「ぐすっ…歩美ちゃんは…学級委員としてだけじゃ、ないよ?」
咲月だった。

「……え?」
いきなり抱き締められた歩美は、呆然としていた。
「歩美ちゃんは…っ…私の、友達だもん!」
「!!」
それまで黙っていた歩美は咲月の“友達”という言葉に反応し、遂には泣き出してしまった。
“友達”なんて言葉ではどうとでも言える。
しかし、歩美は咲月の温かい体温に…暖かい心に、涙腺が緩んだのだ。

「…友達?南美さんと友達になれるの……?」
「友達!ううん、このクラスの一員になったときから…もう友達だよ!」
瞳には涙を浮かべているものの満面の笑み。
そんな咲月の笑顔につられて、歩美も笑顔になる。

「あのー、ちっといい?」
2人の耳に気の抜けた声が響いた。
「何?琴ちゃん」
琴に返事をしたのは咲月。

「2人が仲直りしたことは喜ばしいことなんだけど、私も歩美と仲直りしたいんだよね……だから、いい?」
「え?あ、うん!」
琴の真剣な声に少し驚きながらも歩美の前から退く。