「…ま、今は歩美だね」
ふぅと息を吐いて琴ちゃんは歩美ちゃんの方に向き直った。
「…昨日」
琴ちゃんが口を開き、喋り始めるとピクッと歩美ちゃんの肩が小さく揺れた。
「咲月と歩美が教室から出て行った後、うちらがどんだけ心配したかわかってんの?歩美は咲月のこと嫌ってるぽかったし…。それに、」
「ま、待って!」
琴ちゃんの言葉を遮る。
「?咲月…?」
琴ちゃんは首を傾げていた。
「南美?」
竹井くんは驚いているようだった。
「待って!琴ちゃん…」
私は足を動かし、琴ちゃんと歩美ちゃんの間で止まった。
目の前には未だに首を傾げている琴ちゃん、後ろには尻餅をつき俯いている歩美ちゃん。
「琴ちゃん…」
「…ん?」
「歩美ちゃんを、責めないで…」
そこから黙り、私の話に耳を傾けてくれた。
「こんなこと言ったら皆に嫌われちゃうと思う…。そう思うと怖くて言いたくなくなる……けど!歩美ちゃんも大事な友達だから、言わせてもらうね…?」
琴ちゃんはゆっくりと頷いてくれた。
「私のことを心配してくれるのは、嬉しい。…すっごく嬉しいよ。だけど、あの時は私も悪かったの…。だから歩美ちゃんだけを責めないで…。ううん、違う」
私は首をフルフル横に振った。
「私が悪かったの。歩美ちゃんは何も悪くない…。私が、知らないうちに歩美ちゃんを傷付けていたの。だから…責める人を間違えてる。歩美ちゃんじゃなくて私…なんだよ」
今にも泣きそうになり、また俯く。
……これで、皆に嫌われちゃった。
視界が滲みだし、うるうるしていた私に琴ちゃんがこう、言ってくれた。
「何、言ってんの?そんなことで咲月のことを嫌いになるわけないじゃん。」
ゆっくりと顔を上げる。
そこにはニッコリと微笑んでいる琴ちゃんがいた。
「ほ、んと?」
「ホント!」
「ありが…と…」
「あったりまえでしょ。皆咲月のことが大好きなんだから!」
そう言って頭を撫でてくれた。
「琴ちゃん…」
「それに、うちの言葉遮ったでしょ」
「えっ…うん、ごめん」
「まったく…。うちが大事なこと言おうとしたのに」

