そして、私は気づく。

「ごめん、ナミ、先に戻ってて
 机の中に、鏡とリップ
 忘れてきちゃった」

「うん、教科書貸して」

「ありがとう」

私は、手に持っていた教科書と
筆記用具を七海に預けて

音楽室へ急いで戻った。

教室のドアは、開いたまま。

私は、こっそり中を覗いてみた

すると職員室へ戻ったとばかり
思っていた貴方がそこにいた。
 
眼鏡を教壇の机の上に、外した
ままの形で放置し

窓の外に広がる風景を
眺めている。

私は声を掛けずに、貴方の姿を
見つめていた。