「絵を描いていたと
 いうよりも
 塗りつぶしていたと
 言った方が正解だろう」

『ミオ、お前
 こんな時間に何してる?』

そこには、黒色の絵の具を
塗りたくったキャンバスが
置かれていた。

鴨下の手は、黒く汚れていた。

『本当の私は、こんな作品を
 描きたい訳じゃない

 こんな綺麗な世界・・・
 どこにも無い』

何ヶ月も掛けて、描いてきた
作品が一瞬にして、ただの
ゴミになる。

『何かあったのか?』

『何も・・・この作品が
 気にいらなかっただけ
 
 新しいキャンバス
 買って来たので
 最初から描きたいの
 ですが、先生、もう
 帰らなきゃいけませんか?』

『後、一時間ぐらいなら
 教室を使っても構わない』