貴方は、知らない

昨夜の口づけを

憶えていない・・・

その口づけは、私の心を
惑わせる。

だって、あのキスには
貴方の愛が溢れていた。

貴方は、亡くなった
お姉さんの事を愛してた
・・・

「いずる・・・」

「何?」

「ううん、何でもないよ」

問いかけようとした言葉を
私は飲み込む。

シャツの袖口のボタンを
留めながら、いずるは言う。

「一緒に、学校へ行く訳には
 行かないな
 どちらが先に出ようか?」

「私が先に行くわ
 いずるは、戸締りとか
 あるでしょう?」

「ああ」