黒い空に、今度は薄ピンク色
の傘が広がる。

可愛い、小さな花模様が
散らばる傘。

この傘はきっと

いずるの亡くなった

お姉さんの傘・・・

「レイ、手、貸して」

私は、傘を持たない方の
手を差し出した。

貴方は、その手に触れ
強く握り締める。

並んだ二つの傘・・・

時折、笑みがこぼれる。

「着いたよ」

15分ぐらい、歩いただろうか

ブラウンの外観の素敵な建物を
私は見上げた。

傘を畳み、建物の中

広いエントランスへ入る。

「レイ、ちょっと待ってて」

いずるは、ポストへと歩み寄り
腰を屈めて中を覗いて郵便物を
確認している。