そこは、美術室。

私は入学してから、今日まで
たったの一度も、この場所に
足を踏み入れた事は無かった。

「レイ、中に入って
 誰にも聞かれたくない」

いつもの、雰囲気とは違う
浅緋に戸惑いながらも
初めて知る彼の空間に
ドキドキしながら
私は、教室の中へと入って行く

何かを考え込んでいる、浅緋。

彼は、部屋のドアを閉める。

「どうしたの?
 何かあったの?」

浅緋は、何も言わない。

「ねえ、アッちゃん
 何があった・・・」

どうして

こんなことするの?

どうして

抱きしめたりするの?

「どうして・・・・・・」

浅緋は折れる程に強く
私を抱きしめる。

何が何だか、分からない私。

ただ、その場に
呆然と立ち尽くすしかなかった