「ありが・・」

もうそこに、彼の姿は無かった

私は彼に借りた黒い傘を差して
あなたの姿をカメラで撮った。

私は、雨の中

あなた(貴方)を見つけた。

雨に濡れた姿で、借りた
黒い傘を差し駅へと向かう私。
 
傍から見れば、それはとても
おかしな姿だったと思うけれど
当の本人はそんな事、もう
どうでもよかった。

あの花は、いったい

何て名前なの?
 
知りたい、あなたのこと。

あなた(花)を知りたいが
後に貴方を知りたいに変わる。

駅に着き、傘を畳む。

『この傘、返さなきゃ・・・』

歩き出す私に

車のクラクションの音が
聞こえた。

聞こえる・・・声。