「どうせ、同じことの繰り返し…」



思いつきのまま言葉を吐き出したんだ。
どうせ、
誰も聞いてないんだろうなって。
そういう時に限って、



「え、何が繰り返し?」


たまたますぐそばを通り過ぎただけの彼の耳に届いたみたいで、
聞き返された。
もちろん、返答なんて期待も予想もしていなかったから。
その答えを持ち合わせてはいなかった。


「別に…独り言。」


短く、
吐き出して。視線は爪先。
あ、靴紐解けそう。
よく見ると大分傷んでる。
結構気に入っていたのに。
気に入るとずっと履き続けるのは癖で、気づいたころにはボロボロ。


「ため込まず吐き出してね。」


「…わかってる」


でも、分かってる。
どうせ、自分を理解してくれる人なんていない。
だから、言わないと伝わらないのも知ってる。
だって、心がつながっているなんてことないんだから。
すべてがわかってしまったら困るし。
気持ち悪い。
神様だってそんなこと無理じゃない。
…神様なんて信じちゃいないけど。


「どうせ…」


「言っても仕方ないって思うんでしょ?」


びっくりして、顔をあげると同時にポンっと
軽く本を頭に乗せられた。


「あなたが“どうせ”って口にするときは決まって悲観的だから。」