― 県の海上で、人の上半身らしき物が浮いているのが発見されました。

警視庁は今月に入り続いている連続バラバラ殺人事件と、なんらかの関係があるとみて捜査を続けています。―



そんなニュースがテレビで流れていた。


「この海、家から近いな」

そう言うのは
藤井 学

ソファーに座りコーヒーを飲んでいた。

「本当。なんだか最近物騒よね…、今日も帰り遅いの?」

学の妻、翠は、朝食で使った食器を洗いながら、
話しかけた

「うん。今進めてるプロジェクトが大詰めでさ、
もしかしたら泊まりになるかもな」

学がそう言えば、洗い物を終えた翠が
キッチンから出てくる。

表情は僅かだが曇っていた。

「ごめん。不安だよな。
出来るだけ早く帰るようにするから」

そう言い立ち上がるなり
翠の頭を撫でて

「…うんん、大丈夫。
ほら、この子の為にも
パパには頑張ってもらわないとね」

そう言いながら
翠はお腹を撫でる。

その大きさは
臨月を迎えて、
大きなお腹だった。

「ああ、そうだな。
パパ頑張るよ。」

学は翠の頬にキスをする
それにくすぐったそうに笑う翠

先程の曇った表情は何処へやら
笑顔で学を仕事に送りだしていた。

「行ってらっしゃい」

ベランダからバス停に向かう学に手を振る。

結婚して1年と少し。

働きもので優しい夫
もうすぐ増える家族

まるで幸せを絵に書いたような日常。

翠は学が見えなくなるまで手を振り続けていた。

この幸せが永遠に続く事を疑わない

そんな笑顔で