そこは初めから隣は空室のマンション



あの出来事以来の
引っ越しだ



梓は荷物を片付けながら
ふと、あの出来事を思い出して


消えた若菜


自分が巻き添えにしてしまった感情は今だ癒えない


そんな思いをしまい込むように、新居の片付けを進めれば


携帯が鳴る


表示は非通知


梓は通話を押した。


「もしもし」


梓がでても相手は無言だった。


悪戯かと思い、切ろうとすると
小さな声が聞こえ
再度携帯を耳にあてる。


「―――――ら」


それは忘れたくても忘れられない声



「若菜」


梓は携帯を握りしめた。


そして聞こえてきた言葉は




「トナリにいるよ、次はアケテネ」



梓の部屋の壁が強く殴られた。