都内某所
丘の上の私立高校

放課後、夕陽に照らされた校舎には
少女達の笑い声が響いていた。


「早く早く!先生来ちゃうよ」

そう言い理科室の前で手を振る彼女の名は
青木裕子

「ごめん、携帯が見つかんなくて」

そう言いながらパタパタと走って来たのは、
杉田真奈美

理科室の中には既に
2人の同じクラスの仲間である松永美佳 上田佳代が、椅子に座り待っていた。

「やっときた、もう、真奈美はとろいな」

そう言いながら
理科室の机に頬杖ついている佳代

息を切らし室に入って来た真奈美を見上げる。

「はぁ、はぁ、ごめんてば、携帯が無くてね」

「家に忘れて来たんじゃないの?」

「うんん、朝はあったの…何処かに落としたかな」

そんなやりとりをしながら、真奈美が椅子に座れば裕子が扉を閉め
窓の暗幕をひいた。

「きゃあ、なんか感じでるね」

と、美佳が楽しそうに笑う。

裕子はアルコールランプを3人が座る机の真ん中に置いて、自分も椅子に座った。

「誰から始める?」

「佳代からいく?」

「私、私は後でいいや」

「裕子から、裕子からは?やっぱり先陣切るのは裕子でしょ」

暗い室、アルコールランプに裕子が火を燈せば3人が少しテンション高く話しだす。

指名された裕子は
意味ありげな笑いを口に刻み、
咳ばらい一つ。

「なら、私からね」

裕子が言えば
3人がそれぞれリアクションをする

真奈美は持って来た鞄をぬいぐるみのように抱きしめ

美佳はさも楽しみと言った感じで笑い

佳代は机に頬杖ついたまま、視線だけ裕子に向ける

唯一、皆同じなのは興味津々な瞳。


今から始めるのは

ある噂の検証。

その噂とは

放課後、理科室の真ん中の机を囲み
集まった人数分の怪談話しをして
最後にランプを消せば
幽霊が現れる。

何処の学園にもありがちな噂だ。

だが、裕子達の年頃には恰好の退屈凌ぎになる。


そして
裕子は一人一人と順に目を合わせ、顔から笑みを消した。

いつもよりワントーン低い声で話し出す


「それは、知り合いのお姉さんの話しなんだけど………」