「私、この人にメールしてみよう…決めた。」


ニコはこくりと自分に頷き、BOXの返信欄をなぞった。


「『私で良ければ、メール、してもらえませんか?こちらから、メールをしますので、良ければ、アドレスを教えて下さい、』…と」

携帯のボタンを起用に操り文章を完成させ、送信欄を力無く押す。



こちらのアドレスを教えた方がやりとりはスムーズだったかもしれないが、疑り深く逃げるようなやり方をしてしまったことにニコは少し不安になった。

もしかしたら向こうも疑うかもしれない。
返事が返ってこないかもしれない。
せっかく見つけた『信用できそうな人』をみすみす逃がしてしまうかもしれない。


しかし、
ニコはそれはそれで仕方ないと割り切ることにした。



ゲイの掲示板と名を打っているに関わらず、女と見れば飛びかかってくる男たち。

そんな人を目の当たりにして、ニコの男性恐怖症は加速していたのだ。


だから、だからこそ、
これで返事が返ってこなかったら、それはもうこのやりとりはニコの中でなかったこととして処理しよう、そう思ったのだ。


しかし、ニコは
「返事、来ますように…」
と少しの期待を込めて、BOXを閉じた。