ニコはあくまで、
自分を客観的に見てくれる相手を求めていた。
恋愛対象や性対象の女ではなく、
友達とは少し違うかもしれないが、
自分を『ただの人』として接してくれる『男』を。
はぁ、と小さくため息をつき肩を落とすニコ。
こんなメッセージなら一通も来てない方が良かったよ、と呟き携帯のカーソルを準々に下に下ろしていく。
なんだか嫌な気分だ。
折角友達も出来た、今日はいい日だった、
なかったことにしよう、
そう思い、最下層にある『BOXを削除する』という欄を目指す。
カーソルをずらす中で、ふと、ニコの目に止まったメッセージがあった。
『タイトル:俺でよかったら』
何とも言えない不思議な気持ちになった。
期待はしていないつもりだったが、なけなしの期待を打ち砕かれたニコにとって、もはや深い意味はなく、そのメッセージが気になったことはただの偶然。
ニコはぼうっとしながら意味もなくメッセージの指すメールの絵文字を押してみた。
メールの絵文字が点滅し、画面には文章が現れる。
『俺、ゲイじゃないし、でも恋愛とかあんまり興味ない18歳の高校三年です。
俺も何でも話せる友達欲しいかも。
会うとかないし、お互い気ままにメールしない?
俺も話聞くし!
良かったら返事下さい。
ひろし』
「これ…っ」
ニコは目を見開いた。
携帯を握る手に力が入る。
「この人にだったら、私のこと、話せるかもしれない…」
ニコの目にぱぁっと光が宿った。
