「…ぃ。…せい。…せ-んせい??」

気づくと目の前に制服をきた生徒が1人

ボーっとしていたせいかまったく気づかなかった


見た目はどちらかというと、男みたいだった。

でも制服はあきらかに女もののスカートだ。

「…あっ、あぁ。ごめんごめん。」

慌てて答えるとその生徒は笑顔を見せた。

「新人さんかな-??(笑)ねぇ。名前教えてよ」

馬鹿にされたような気がしたから馬鹿に仕返した

「人に名前を聞く時は先に自分から名乗りなさいよ(笑)」

はいはいと小さく笑ったその生徒は、教室の隅のゴミ箱からまだ使えそうな紙を一枚つかみ取り、近くの机に置いてあった誰のかも知らないだろう筆箱の中からペンを1本取り出した。

そしてスラスラとペンを滑らせる。

「"幸田 冬雪"って書いて(コウダフユキ)だよ。よろしくね、新人先生♪(笑)で-、先生の名前教えてよぉ-」

名前を聞いても女だと確信できない。
男でもありえそうな名前だから。

というか、新人だということで、おちょくってるのだろうか。

そもそも私は新人じゃない。
ただの転勤だ。

「幸田冬雪ね-。要チェックかなぁ??(笑)新人だからってなめないでね-!ってか私転勤してきただけだし-!(笑)名前は後で分かるでしょ。入学式で紹介があるはずだから。」


ワザとじらしてなぜか得意げに話す私を見て、冬雪はお腹を抱えて笑う。

「せ…んせぃ、ぷ…アハハハハハ!」

「何笑ってんのよ??」

私は不思議そうに冬雪を見つめていた。

冬雪は笑いをこらえて深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

「あと1分で、入学式始まっちゃうよ!?教師が入学式に遅刻ってさぁ-(笑)」

ギクリとして恐る恐る時計を見た。