朝方、疲れきった皆は
寄り添いながら寝ていた
トイレに行こうと扉を開けて
少し歩いていたら、
クラスメートの一人、
桐山(キリヤマ)君が壁に
寄り掛かって立っていた
「桐山君じゃん」
「あ……!岩崎さん」
彼はサッカー部で
背がひょろりと高く
場を盛り上げるような人
授業中だけかける
黒ぶちメガネは
女子の評判だった。
飯島みたいに
不思議というより
どこか遠い人
「岩崎さん歌凄いね」
「いやぁ…ありがとう」
「まじ、ウルッと来た」
「えー?ほんと?
顔が嘘っぽい」
「ほんとほんと!ははは」
そう言って私は
桐山君の前を通り過ぎようとした
その時私の手首を
彼が掴んで、私を引き止めた。
「…あ……………。」
慌てて手を離した桐山君は
顔を真っ赤にしていた。
「どうしたの……?桐山君…」
「え、いや…………。」


