「え、いや。
…………なんで?」
「あはははは」
理由も言わずに
ひなちゃんは笑っていた
兄の飯島真とは
違う種類だと思ったが
やはり、きょうだい揃って
不思議だった。
「あたしね」
不意にひなちゃんは
話し出した。
「華奈子さんの
歌を聴きたい」
「……………。」
「いつも基礎の発声練習。
ちゃんとした歌を
聴いてみたい。」
「いつもって………。
いつも聴いてたの?
あたしの練習。」
「はいっ」
大きく頷いた彼女は
またキラキラしたオーラを
私に向かって放った。
「華奈子さんの好きな歌、
歌ってください」
「…………うた…」
私は彼女におされるがまま
喉の調子をととのえて
水を一口飲んだ


