だけどモヤモヤした気持ちは
なぜか消えていた。
前に進んでいいのだと、
素直になっていいのだと
思えばたくさんの事を
翔弥は教えてくれた。
初めての彼氏で
初めてのデートも
初めて手を繋ぐ事も
触れ合う事
キスをする事
大好きな人の
特別になる事
一緒に笑う事
たくさん教えてくれた
「翔くん……。
ありがとう。」
「……おう」
「あたし…いっぱい頑張る。
翔くんがあたしを思って
いろいろしてくれた事も
無駄にしたくないから。
素直になる」
「華奈子なら大丈夫」
私が玄関のドアを開け
家の中に入る瞬間
もう一度振り返ってみたら
翔弥は私を優しい目で
見守っていてくれた。
こんなに素敵な人を
失ってまで
私は飯島を選んだ
やっと気づいた
隣にいたのは翔弥だったけど
隣で一緒に笑っていたのは
いつの間にか
飯島だった


