うつむいて泣く私の顔の
両サイドの壁に
どんっと手をつく音がした。

驚いて顔をあげると
彼の顔が間近にあった。
両腕は私を挟んで
壁に押し当てられていた。


唇にほんのり
息がかかる

唇と唇が触れる寸前。


「…………え……」


何も言い出せない私に
我に帰ったように
また隣に移動する飯島。


「ごめん」


状況が把握できない。


「お前が泣いてる姿みると
 ………………。」


言葉がつまったように
言いにくそうにする彼の頬は
赤かった気がする。


やっぱり飯島は飯島だ。


さっきあんな顔を近寄せて
ドキドキするような事を
しようとしてきても、



飯島は飯島。



「あーーー」


飯島は両手を顔にあて、
上を向いて叫んだ。


そんな姿が可笑しくて
笑ってしまった。


「ふっ………」

「笑うな馬鹿」


確実に頬は真っ赤だった。



「ねえ飯島。」

「あ?」

「さっきなんて
 言おうとしたの?」

「…………。」