「ねぇ、そういえば
 かなちゃんの歌声
 まだ聴いたことないよね」



魅麗さんの一言で
私達はスタジオに向かった。

楽器もマイクも揃っていて

歌手の人は、よく
ここで練習をしている。



「初めて来た。」


「そうなの?かなちゃん」


「……うん」


「あたし達はしょっちゅう
 ここで練習してたの。
 でも肝心のボーカルが
 いないからやる気が全く
 出なくってさ」



マイクを私に渡して

私が歌詞を覚えている
有名な曲を

3人の奏でる前奏で

完璧では無いけれど


この4人でやる
初めての曲が始まった。







お客も誰も聴いていない



なのに


不思議だね





舞台に立っている気分

気持ち良くて
歓声が聞こえるの。





魅麗さんのベース
迅さんのギター
かっちゃんのドラム

そして

私の歌声



初めて合わせた曲は
なんだか微笑ましくて

幸せで


スタートするんだって
強く思わせてくれた。