「今日もすごかったですー」
「これ、プレゼントです。良かったら、使って下さい」
ファンの女の子達の矯声が狭い路地に響き渡る。
あたしも明の方に行きたいが、すでに彼は数人の女の子に囲まれていて、嫌そうな顔を一つすることなく、彼女達に応対していた。
その時だ。
「アキラ」
一人の女性が明のそばにやってきた。
艶やかな長い黒髪に、エキゾチックな顔立ちの美人。
黒いチューブトップにピッタリとした白いパンツと言ったシンプルな服装だが、彼女がすれば外国のモデルのようだ。
ブランドもののバッグに、10センチ以上踵のあるハイヒール。
小麦色に焼けた肌が、その全てによく映えた。
体型も細すぎず太すぎず、しかし出ているところはしっかりと出ていて、引っ込むところは引っ込んでいる。
世の中の男性すべてが、彼女を見て「いい女だ」と思うだろう。
雛妃(ヒナキ)だ、とすぐに思った。
インターネット上で、プロ・アマ問わずバンドファンによる情報交換の場として、とある掲示板サイトがある。
情報交換と言っても、大部分はメンバーの誰それとファンの誰それが付き合っている、あのバンドとこのバンドは仲が悪い、メンバーの誰それが駅前の居酒屋でアルバイトしているのを目撃した−。
と言った、女性週刊誌の内容の範疇を超えないレベルの書き込みがほとんどだったが。
その掲示板に、フェニックスについての項目もあり、一回目を通した。
それによると、この雛妃と呼ばれる女性−本名かどうかはわからないが−はフェニックスの追っかけのリーダー的存在で、フェニックスが結成された当初から彼らのファンだった。
おまけに明と長年の恋人同士の関係だった。
何故【だった】と過去形なのかと言えば、最近二人は別れたと、これまた噂話の類いに過ぎないものだが、そうも書かれていた。
原因は女好きで女を見れば口説かずにはいられない、イタリア人の様な気質の明の散々な浮気に耐えてきた雛妃だったが、ある時とうとう堪忍袋の緒が切れた。
二人が半同棲していた彼女のマンションから、明の私物がごっそり段ボールに入れられゴミ置き場に置かれてあった−との逸話が書かれていた。
もちろん真偽の程は不明。
そんなこんなで、フェニックスの項目のほとんどは、メンバーの恋人であった雛妃に対するファンの僻みや嫉妬による、悪口や誹謗中傷が大部分を占めていた。
「これ、プレゼントです。良かったら、使って下さい」
ファンの女の子達の矯声が狭い路地に響き渡る。
あたしも明の方に行きたいが、すでに彼は数人の女の子に囲まれていて、嫌そうな顔を一つすることなく、彼女達に応対していた。
その時だ。
「アキラ」
一人の女性が明のそばにやってきた。
艶やかな長い黒髪に、エキゾチックな顔立ちの美人。
黒いチューブトップにピッタリとした白いパンツと言ったシンプルな服装だが、彼女がすれば外国のモデルのようだ。
ブランドもののバッグに、10センチ以上踵のあるハイヒール。
小麦色に焼けた肌が、その全てによく映えた。
体型も細すぎず太すぎず、しかし出ているところはしっかりと出ていて、引っ込むところは引っ込んでいる。
世の中の男性すべてが、彼女を見て「いい女だ」と思うだろう。
雛妃(ヒナキ)だ、とすぐに思った。
インターネット上で、プロ・アマ問わずバンドファンによる情報交換の場として、とある掲示板サイトがある。
情報交換と言っても、大部分はメンバーの誰それとファンの誰それが付き合っている、あのバンドとこのバンドは仲が悪い、メンバーの誰それが駅前の居酒屋でアルバイトしているのを目撃した−。
と言った、女性週刊誌の内容の範疇を超えないレベルの書き込みがほとんどだったが。
その掲示板に、フェニックスについての項目もあり、一回目を通した。
それによると、この雛妃と呼ばれる女性−本名かどうかはわからないが−はフェニックスの追っかけのリーダー的存在で、フェニックスが結成された当初から彼らのファンだった。
おまけに明と長年の恋人同士の関係だった。
何故【だった】と過去形なのかと言えば、最近二人は別れたと、これまた噂話の類いに過ぎないものだが、そうも書かれていた。
原因は女好きで女を見れば口説かずにはいられない、イタリア人の様な気質の明の散々な浮気に耐えてきた雛妃だったが、ある時とうとう堪忍袋の緒が切れた。
二人が半同棲していた彼女のマンションから、明の私物がごっそり段ボールに入れられゴミ置き場に置かれてあった−との逸話が書かれていた。
もちろん真偽の程は不明。
そんなこんなで、フェニックスの項目のほとんどは、メンバーの恋人であった雛妃に対するファンの僻みや嫉妬による、悪口や誹謗中傷が大部分を占めていた。
