テスト最終日の放課後、クーラーのかかる生徒会室でシャツのボタンを全開にしてソファに寝転がる耕平が集合時間より少し早めに来た雄介の視界に入った。



「いくら夏でも風邪引くぞ」



いつもなら『ほっとけ』などと文句のひとつも返ってくるところだが応答がない。

耕平がテスト前は毎回徹夜だと言っていた事を思い出し、疲れが溜まって熟睡しているのだと解り、仕方なく薄い布団をかけてやる。



「ん……さんきゅ晃」



重い瞼を薄く開けた耕平は優しい笑顔でそう言うと再び眠りに落ちた。



耕平の見せた笑顔は雄介が知るどの笑みでもなかった。

自分に向けられたものではなく、寝ぼけて誰かと間違われた事に気付いてはいたが、こんな顔もできるのかと驚いた雄介はしばらく耕平から目が離せなかった。

視線を感じたのか眉間にしわを寄せながら耕平が目を開けた。



「キモいんですけど」



第一声は目が合った瞬間のこの一言だった。



雄介が我に返る。



「あの、先に言っとくけどオレそっちの趣味ないからね」


「俺もねぇーよ!!」



いつもみたいな喧嘩ごしではなく若干遠慮気味に言われたから余計に腹が立った。