徒歩組も途中、二方向に分かれた。

歩達と別れた後、雄介は奈々花の歩幅に合わせ、しんとした夜道をゆっくり歩いていた。



「ウチの会長お嫌いですか?」



奈々花の突然の問い掛けに少し驚いた雄介が間をおいて答える。



「…向こうが俺を嫌いなんじゃね?」


「確かに会長はあなたを苛立たせる天才ですね」



苦笑いして奈々花が続ける。



「だけど嫌いな訳じゃないと思います。むしろ好きなのかも」



思いもよらない奈々花の言葉に雄介は目を丸くしたまま言葉が出てこない。



「いや、恋愛対象とかじゃないですよ」



雄介の異様な驚きぶりに奈々花が慌てて言葉を足す。



「当たり前だ、気色わりぃ」



我に返った雄介が声を荒げ、そっぽを向く。

その姿が可愛く見えた奈々花は雄介に気づかれない様に小さく笑った。