夏樹の顔を見ていられなくて、自然と俯いてしまう。 『彩…、泣いても知らねぇぞ?』 夏樹の色っぽい低音ボイスが、俯いたアタシの顔を撫でているようで、ゾクっとした。 何よっ! もう泣いてるわよっ! 夏樹がバカだから泣きそうよっ! 「…もういい。」 夏樹もバカだけど、アタシはもっとバカだから、こんなアタシの幼稚な駆け引き続けても意味がない。 どうせ夏樹はもうすぐ帰るんだから、こんな気まずいままじゃ嫌だ。 せめていつも通りの雰囲気を取り戻して別れたい。