彼女の手を強く握り返す。
もう少しだけ、僕を待っていてくれないかな?


目が合うと、彼女は優しく頬笑んだ。

「大丈夫だよ、ここにいるから」

言葉にしなくても、伝わっていく想いに、先を越されて答えられてしまうけど。
いつもいつも、助けられてしまうけど。

分かってるんだ。
きっと、今でも十分幸せだって、彼女は言う。

だけど、これは僕の誓い。

いつか、必ず僕から言うから。
必ず僕から伝えるから。


溢れるほどの幸せを、君に約束する。
だからそのときは、僕に人生を預けてくれないかな?


カッコいいプロポーズの言葉なんて言えそうにないけど。
胸を張れる男になるから。
君を守る男になるから。


ごめんね、と言う少し手前で飲み込んで、ありがとうと言ってみた。

鼻の奥がツンとするのは、冬のせいにしておくよ。


ほんのり柑橘の匂いを乗せて、電車はひたすら次の駅を目指して進んでいた。