「みゆきちゃん」

篠沢さんがあたしの後ろにいた。

「あ、れ、いたんですか?!」

あたしは振り向いて篠沢さんを見上げる。

「当たり前だよ。みゆきちゃんが来るの待ってたんだから」

篠沢さんは微笑む。

「え、てっきりお昼行ってるかと…」

言葉が嬉しくて恥ずかしくて、あたしは目をそらした。

「女の子に仕事任せて昼行っちゃう冷たい男に見える?」

「…」

「何その沈黙!ひでぇ~!」


見えません、なんて言えないし!


「これ、資料です」

「ありがとう、助かるよ」


あたしは篠沢さんにファイルを渡した。


「これ、お礼」

篠沢さんがあたしに飴をくれた。

「ありがとうございます」

「安くてごめんね、ただの飴で」


あたしは首を振った。

ただの飴なんかじゃないよ。

食べれない。


嬉しすぎて、食べれないよ。