「その先生なら、この春から転勤なさったけど。」

…何を言ってるんだろう、この人。

僕は、自分が面談を受けている立場であることも忘れて、ただただ呆然とした。

テンキン、って、転勤?

じゃあ、ここには、もう…


「舘山先生は九年も勤められていたからねぇ。素晴らしい先生でしたよ。三年前には彼女のお陰でうちの学校が全国一位の栄誉に輝きましたからね…ああ、伊東君向こうで合唱部だったの。それは楽しみにしてたでしょうに、残念でしたね。まあでも、部活はあるから心配しないで。思う存分活躍してください。」


まるで自分の功績を自慢するかのように、目の前の女性教師はやたらといきいき話していた。


冗談じゃない。楽しみにしてたのに残念、で済んでたまるか。

舘山先生という人が素晴らしいということも、三年前に全国制覇をしたことも、その演奏が歴代伝説として語り継がれるような内容であることも

全部、誰に言われなくたってちゃんと僕は知っている。






…そのためにこの学校を選んだのだから。