――――俺は校舎を見上げた。

青空をバッグに堂々と建つその建物は…
俺の心を動かすのには充分すぎるほどだった。

――ここに行きたい。

本気で、初めて進路を考えた。

本気でやりたいことを、考えた。

先生にも、俺の頭じゃどこにも行けない。

そう言われた。

そんなのわかってる。

だれも、俺に励ましとか、出来るぞって言わなかった。
唯一言ってくれたのは姉だけだ。

たまに家に帰ると、家事をしながらも勉強もしている姉を見て

『こんな姉ちゃんみたいなつまんない人生は願い下げだ。
俺は自由に生きる』

そう思った。

頑張ってる姉に対して、応援してくれてた姉に対して、最低なことを考えたもんだ。


「なぁ…今からでも間に合うか?」


ポツリと呟いたその言葉は誰かに届くことなくその場で消えた。