その男の自信に満ちあふれた態度と、
いつになく冷たく接している佳菜子の様子から、
二人の仲に、自分とは違う何かを感じていた。


でも“もしかしたら、俺に対して、特別に明るく振る舞ってんのかもしんねーし?”と、思ってみたり…


そうでもしてないと、試合を間近に、集中できなかったのだ。


すると高木は、自分自身に賭けをした。


“今度の大会で結果が出せたら…その時…”


必死だった。


しかし、自分に厳しい高木にとって、納得のできる結果ではなく…


そんな時、

その試合を観て、自分を高く評価してくれる人物が現れた。


それを糧に、一歩踏み出す勇気を持った高木だったのだが…

その一歩は、違う方向へと向けられることになってしまう。


高木は聞いていたのだ。


放課後の教室で、

“大沢とつきあうことにしたの”

ゆっこに告げられた、佳菜子本人の言葉を…


あの日、佳菜子とゆっこの会話が、廊下で全て聞いていた高木に、転校を決意させたのだった。


(ふっ…これでバスケに集中できる…か。)


オファーの件は、最後の練習の日のミーティングまで、誰にも告げられることはなかったが、

佳菜子が居残りさせられていた、あの日、
野本さえ教室に戻ってこなければ、
もしかしたら、佳菜子に告げられていたかもしれない…