カフェを出て、駅へと向かう街並みは、行きと違って輝いて見えた。


それは夕陽が傾きかけていただけなのだが、
この時の佳菜子には、
黄金色の“金”にも等しく映ったのだろう。


そんなとき、正面を歩く三人組の男子高校生に気がついた。


何を話しているのかは分からないが、楽しそうに笑いながら歩いている。


(あの制服って何処の高校だろう?)


何の気なしに、彼らに目をやった佳菜子は、
すれ違う少し手前で、一番手前の男子と目が合った。


(あ…かっこいいかも…)

その瞬間、

その男は、目を反らさずに、
佳菜子に向かって舌を出して見せた。


(え???)


“だから何だ”ってこともなく、その男は、他の二人と共に、横を通り過ぎていく。


思わず振り返って見る佳菜子。


すると男は、顔だけで振り返り、ニヤッと笑ってみせるのだった。


「佳菜?どうしたの?」

「え?あ…何処の制服かなぁって…」

「なんで?かっこ良かった?」

「違うよ!こんなおしゃれな街が通学路なんて…」

「ホント、羨ましいよねぇ。」

「…うん。」


いくらイメージチェンジしたからと言って、そうすぐに“中身”も変わるはずのない佳菜子だった。