どこかで誰かが…

「…ちょっと佳菜ちゃん?聞いてる?」

「それで、かぁくんは?」

「だから今、病院で」

「どこ?なんて病院?!」

「…佳菜ちゃん?」


病院名を何度も確かめながら、佳菜子は慌てて会社を飛び出していた。


(あの後ろ姿が頭から離れなかったのは、虫の知らせだったの?)


普段から、物事を悪い方へと考えがちなところは、佳菜子の悪い癖だが、

今朝、二人が交わした会話を思い出しては、

(あんな会話のままなんて…絶対にあり得ない!)

まるで祈るように、必死に否定し続けていた。


タクシーの中でジッとしてると、いろんな事を考えてしまい、深い後悔が押し寄せてくる。

それは恐怖にも似ていて…
震えだす体を、腕組みをして自分で押さえ付けた。


病院に着き、早足で病室に向かうが、
近づくにつれ、足取りは段々と重くなっていく。


清瀬の名前をみつけると、一旦、ドアの前で立ち止まり、深呼吸をして心を落ち着かせた。


(…うん。よし。)

ドアノブにそっと手をかけ、少しだけ開けた隙間から中を覗き込んでみる。


(あれ?)

ベッドは見えるが、人影がなく、さらにドアを開け、足を踏み入れるのだが…

「…いない…なんで?」


呆然とする佳菜子だった。