どこかで誰かが…

慣れない町を歩く佳菜子―――

すれ違う人は会話さえもままならない、知らない人ばかり。


カフェラテでも飲もうと、コーヒーショップへ寄ってみることに…


マニュアル通りの日本の店と違い

「ハロ〜。」

と迎える店員。

すると、初めて訪れたにもかかわらず、つい、

「ハ〜イ。」

と応えていた。


日本だと、“いらっしゃいませ”と言われ、
“こんにちわ”と返すことなど、高級店だったり、常連客でなければあり得ないことだ。


そのあと、お土産でも見てみようと民芸品店に入った。


「家にはともかく…会社でしょ、チームでしょ、あとは…(清瀬に…ってどうなの?)あ!家族で〜ってことで(いいかな)!」


メイプルシロップクッキーを手にレジへと向かう。

そんな時も店員は、佳菜子が持つノンブランドのバックを軽く褒めてくれたりする。


本場の“フレンドリー”を実感させられると同時に、今、この状況に自分が置かれていることを不思議に思う。


片桐とつきあっていなければ、
カナダという国を訪れることはあっただろうか?

それどころか、

こんなにもフレンドリーな空気に自然に受け答えることが出来ている自分に驚き、

ふと、昔の自分を思い出し、

(人間、変われるもんだな…)

まるで他人事のように思いながら辺りを見渡した。