「ジンさんこそ、結婚しないんですか?」

「今、かなり金銭的に無理しちゃっているので、もう少し軌道に乗ってからでないと…」

「さすが男ですね〜。」

「相手が理解のある人で助かります。」

「きっとステキな人なんでしょうね。」

「本当に、僕にはもったいないくらいです。」

「うわぁ〜。そんな風に言えるなんて、スゴい!」

「本人には言ったこと無いですけどね。」

「…きっと、分かってもらえてますよ!」

「と思ってます。何より、目標があると頑張れます!」

「そうですね!」

「あぁ…自分のことばかり喋りすぎましたね。佳菜子ちゃんこそ、結婚を決めた理由は何だったの?」

「え、私ですか?」

「興味深いです。僕の魔法とやらが…」

「…そうですね…どうしても、昔の癖で“自分が我慢すれば良いんだ”ってなりがちだったことが、恋愛ならともかく、結婚ではあってはならないんだって分かった時…かな?」

「ん…なんか、深いね。」

「深いです。深すぎて、見失ってしまうところでした。」

「…なるほど。」

「えへへ。」


そんな4年前のあの日――、

佳菜子がカナダへ向かったことを聞いた清瀬は、思わず片桐にメールを送っていた。


『時には嘘は必要!その時は最後まで隠し通すべし!参考までに頭に入れといてくれ。』