どこかで誰かが…

トイレから出てきた清瀬がリビングに行くと、キッチンに立つ佳菜子が見えた。

「あ、冷たいのがイーよね?」

「あ、あぁ。」

「コーヒー?麦茶?」

「なんでもイーよ。」


誰もいない堀口家に佳菜子と二人…いつに無い空気に意識するのは清瀬だけか…?

「あ!」

「なに?!」

「ビールあるよ!飲み直す?あんまり飲めなかったんでしょ?」

「あー…」

「明日、部活は?」

「午後から。」

「じゃあ座って座って!私も飲もうっと!何かおつまみは…」


テーブルからは、キッチンで用意をする佳菜子が丸見えで…ソレは、長い付き合いの中で、初めて見る光景だった。

新鮮と言うか、もの珍しいと言うか、
清瀬の視線は、無意識に佳菜子の姿を追っていた。


そして、さっきの佳菜子の言葉が頭を過る。


『結婚するって、こーゆーことなんだよね?』

「え?!」

「ピクルス!食べれる?」

「あ、うん。」

「胡瓜、人参、セロリに」

「あー、セロリはいらない!」

「えー美味しいのにー」

「おまえが漬けたんじゃねーだろって」

「なんか文句ある?」

「ないです。あ、運びます。」


“普通な感じ”を装って、ようやくビールにありつけた。