どこかで誰かが…

佳菜子の父親は、当時、清瀬が通っていた空手教室の師範だった。


今だに、清瀬を可愛がるのは、
決して、亡くした息子と重ねているワケではない。


あの頃、道場へとやってくる清瀬の、空手に対する姿勢に魅せられた父親は、

“弟子にするつもり”とまでは言わないが、

最後まで教えることの叶わなかった事実を、悔やまずにいられなかったようで…

それでも、サッカーに没頭していく清瀬を応援しつつ、いつも気に掛けていた。


そんな佳菜子の父の口癖は……

「あいつ、何に遠慮してんだ?」


おかげで佳菜子も、そんな清瀬を気に掛けるようになり、
清瀬はソレを嫌がった。


そして、いつしか思春期を迎え、

そんな二人と言えば、
目が合えば口喧嘩ばかりだった。



「懐かしいな…」

「嘘つけよ。お前が見てた相手は違うだろ。」

「…」

「あ。」

「あは。…ソレはもう時効でしょ。」

「だよな。片桐くんがいるもんな…」

「ひとつ言わせてもらえれば、私、あの頃はまだ、バスケが一番だったから。」

「…なんの告白?」

「!そうか…そうだよね!」

「は?」

「やる!あたしミニバスのコーチやるよ!」

「?…なんだよ急に。」

「うふふっ!」