相当嬉しかったのか、
ビールやシャンパンを飲むピッチの早かった佳菜子は、早いうちに酔いつぶれてしまい、
早々に、母親が来て連れて帰ってしまった。


そのおかげで、男二人で酒を酌み交わす時間ができ、

「キヨスク、あいつ仕事どんな感じ?」

この時とばかりに片桐は尋ねるのだった。


「ま、うまくやってんじゃね?」

「…カナダに行くとか言ってないか?」

「さっき言ってたじゃん。」

「あれは遊びに来るって話だろ。」

「あ〜。つーかさ、片桐くん帰って来すぎ!これじゃあ堀口も危機感が湧かねーって!もっと寂しがらせないとさ。」

「そっか。…いつも面倒かけて悪いな。」

「別に面倒じゃねーよ。物心ついた時からのコトだぜ、歯磨きみたいなもんで、慣れっこだよ。」

「…今日、おまえの彼女は用事があったのか?」

「気を使うのは苦手だからって…ごめん、あんまり社交的じゃないんだよ。」

「え…なんか悪かったなぁ。」

「いやっ。物事ハッキリ言うヤツで、一緒だと俺もハラハラさせられただろうから…ちょっとワガママなんだ。ドライブしたいって言うから、ほら、前に3人で行った伊豆の…あそこの夜景の話したら、“そんな遠くは時間の無駄”って言われたし。」

「ぷはっ。おまえは説得しなわけ?」

「自分の意志が一番なんだ。俺が無理でも友達がいるし、一人でも行動できるもんで。」

「冷めたカップルだな。大丈夫か?」

「空いてる時間が逆じゃん。俺は昼間、あっちは夜。割り切らないとさ…あっちはまだ学生だし。」