どこかで誰かが…

その“何か”をハッキリさせぬまま月日は経ち、
軽く不安を抱いているなんてことが佳菜子に悟られぬよう、日々、気を引き締め、穏やかに見せている片桐が、
不意に電話をかけるのは清瀬だった。


「仕事の方はどんな感じ?」

「ん…まあまあってとこかな。」

「ほー。」

「おまえは?もう教育実習とかって行ったの?」

「終わったよ。」

「そっか。」

「…そんな電話?」

「ん…なぁキヨスク。」

「んあ?」

「あ…やっぱイーや。」

「なに?気になるんだけど。」

「そーだ、おまえ彼女できたんだって?」

「まあ…」

「押しの強い子だって聞いたぞ。ま、おまえにはさ、そーゆー彼女の方がイーのかもな!」

「…」

「女にとってもその方が良いんだよ、ホントは…」

「そうっすかね?堀口を見てるとそうは思わないけど。」

「そこなんだよ!あいつってさ、何も言い返さないから、たまに、我慢させてんじゃないかって思うときがあるんだよなぁ、俺。」

「…前の男の時と比べたら、今の方が良さ気に思えるけど。」

「おまえは佳菜のこと、なんでも分かるんだな…」

「なんかあった?」

「俺さ、佳菜が何を思ってるか、どう行動に出るかが読めなくて、いつも聞いちゃうんだよ。大丈夫?退屈じゃない?ってさ…ほら、あいつ全然わがまま言わないだろ!いつも楽しそうにしてるから、たまに不安そうにしてると、すぐに分かって便利だけど、それってよっぽどなんじゃないかって、」