「俺は、スポーツ推薦じゃなかったからなぁ。」

「そうなんだ。」

「言っても良い?」

「え?」

「推薦組じゃなくてもレギュラーになれる自信あったし!」

「ほー。」

「…母親が入院してさ。今、ばーちゃんと暮らしてんだ。もともと母子家庭だから、仕方ねーんだわぁ。」

「…知らなかった」

「言ってねーもん。」

「それで編入…それは…なんて言うか…」

「別に気ぃ使わないでいーよ。…行きたかった学校だったってわけじゃねーんだ。行った学校がたまたまバスケが強かったってだけ。確かに、強豪チームを維持していくことって、やっぱ大変なことだよなぁ。」

「と、思う。」

「でもさ、このチームが強くなるのと、どっちが大変かな?やりがいあることには間違いないだろ?」

「勝って当然の喜びと違って、計り知れない喜びだろうね。」

「だから、いーんだ。全然悔やんでないし、俺。」

「…(なるほどね)」

「こんなこと誰にも言うなよ。」

「なんで?」

「プレッシャーに思われたくないじゃん。」

「あ…。あ〜!!」

「なに?!」

「あ、ごめん。何でもないの。(さっきの清瀬の話、ゆっこちゃんにちゃんと口止めできてなかったけど…大丈夫かな?)」

「ふっ、変な奴。」

「私?」

「なんかさ…思ってたのと違った。」

「そ?例えば?」

「んー…あらためて聞かれても出てこないけど…」