どこかで誰かが…

こうして、思いがけなくも佳菜子の気になる人物の存在を知ることになったゆっこは、
高梨の協力のもと、
その男の手がかりを掴むことに、必死になっていた。

なぜならば、

昔から佳菜子は、ゆっこにとって気掛かりな存在なわけで…

余裕ぶって、高梨のことを彼氏役にと提供してはみたものの、
いつまでも、佳菜子の彼氏代わりにさせておくのは、内心、心配だったのだ。

そして、

“このままだと、もしや、清瀬とどうにかなってしまうのでは…”

そんなことを考え、
今は未だ、それだけは許せずにいる自分にも気付かされる。


そうもしているうちに、片桐のバイト先に到着。


「居るのかなぁ…ねえ、やっぱり止めようよ!」

「ココまで来て何言ってるの?」

「そーだよ佳菜子ちゃん。とりあえずさ、客として…ね、ホラ、なんかスゲーいい感じの店だし!」

「うんうん!」

「佳菜子ちゃんのお薦めの店ってことで!」

「ん…」

「そうそう!キスの真相なんて、とりあえず置いといて、まず入ろう!飲もうよ!」

「俺もう、喉乾いちゃってさ〜!入ろ入ろ!」


完全に二人に乗せられた感じで、一番最後に敷居をまたいだ佳菜子は、
しっかり顔を上げられないまま、三人を席に案内する店員のあとに付いて歩くのだった。


顔が見れなくても、声や腰の高さで片桐でないことは分かる。


(やっぱり居ないのかな…?)