どこかで誰かが…

秋山という男は、とにかく気を使う男だった。


人のグラスの中身が少なくなると、

「何飲む?」

とたずね、

「あんまりお酒、強くないから。」

と言う佳菜子には、

「じゃあ、ウーロン茶でも頼もっか?」と、

自分の気の利かなさを思い知らされ、恥ずかしくなる程だった。


(本当に“いー人”なんだろうなぁ。…私みたいな女は、どう見られてるんだろ?何も言われないのって怖いな…)


欠点を指摘されることに慣れている佳菜子は、実はその方が、相手も自分に感心を持ってくれているのが分かり、安心できたりしたものだった。


すると突然、

「片桐さん!バイトのあと、一緒に飲みません?」

そろそろ、エンジンの掛かりだした未央里が、

「あー、今日はどうかなぁ?」

曖昧な返事をする片桐に、

「明日は何もないから、遅くても大丈夫です。」

アルコールの力を借りて食い下がった。


「…秋山、おまえは?」

「いっすよ。あ、佳菜ちゃんは?今日は大丈夫なの?」

「私は…あんまり飲めないから、ある程度したら帰るかな。だから三人でどーぞ。ね、未央里ちゃん。」

「そう?…ま、それなら仕方ないか!」


自分のことに必死な未央里の切り替えは早く、
一瞬、その場が凍ったように感じた。